2009年03月20日
夜の終わりに

スティーブン・キングに次ぐモダン・ホラーの人気作家、ディーン・R・クーンツの作品ですが、ホラーではなく、心に深手を負ったベトナム帰りの主人公が、シリアル・キラーの犯行をたまたま阻止したことで逆恨みされる、アクション・スリラーです。
なによりも、表紙にジャック・ダニエルが大きく描かれているのに、取り上げないわけにはいきません。
居間にあたる場所に足を運び、グラスに氷の塊を二つ入れ、ジャック・ダニエルを注いで傷の治療の仕上げをし、その素晴らしく効果的な薬を持ってベッドにもぐりこんだ。
発表が1970年と古く、大成するまえの出来で、クーンツならなんでも売れたブームの盛りに勢いで邦訳された一冊でしょう。ただ、PTSDに苦しむ帰還兵に一早く着目したあたりはさすがで、シルヴェスター・スタローン主演の「ランボー」の原作として有名な、デイヴィッド・マレルの「一人だけの軍隊」より2年も先んじていますし、シネマチックな描写、スピーディな展開といった、後年のページターナーぶりもすでにうかがえます。
ところで、ジャック・ダニエルのイラストや写真を装幀した小説は、本作のほかに、ローレンス・ブロックの「一ドル銀貨の遺言」など、ぼくが知っているだけでも数作あります。

黒地に白文字だけのシンプルなラベルが記号化されて、ハードボイルド・タッチの作風にはバーボン、バーボンならジャック・ダニエル、とのイメージをデザイナーが抱いているからだと思います。
バーボンでは初めてのスクエア・ボトルまで含めて、シンプルでいて人目を惹く、百年を経てなお色褪せない普遍的なデザインですね。
ちなみに、NO7の意味は、たしかに7年前後の原酒をおもにヴァッティングしてはいるものの、同じテネシー・ウイスキーのジョージ・ディッケルのNO8とNO12とは異なり、本来は熟成年数を表しているのではないそうです。
ジャックには、タラホーマの近辺で7軒の雑貨店を営むユダヤ人の知人がいました。おそらく得意先だったのでしょう。彼の成功にあやかり、また、縁起のいい数字でもあったので、1884年にブランドネームをベル・オブ・リンカーンからジャック・ダニエルに変えたさい、NO7の表記を加えたとされています。
また、スクエア・ボトルを採用したのは1895年のことです。



