ウスケバ・ロゴ ウスケバ・ロゴ ウイスキー造りに欠かすことの出来ない「水」そして「樹」。自然の力が生み出す「生命の水」。

2009年08月09日

死 角




















 底冷えのする十一月の朝、その見知らぬ娘の死体は、湖辺の葦の茂みの間に無造作に捨てられていた。財布の中にはなぜか私の名刺が……。事務所に帰った私を待っていたのは、交通事故を起した弟の身辺警護をしてほしいという、女性からの依頼だった。しかし彼のあとを尾けた私が発見したのは、もう一つの死体―
裏表紙ストーリー紹介より

 ビル・プロンジーニの名無しの探偵シリーズの第6作です。
 ネオ・ハードボイルドを代表するシリーズで、1980年代までは日本でも人気が高く、初期の作品はいずれもかなりの版数を重ねていますし、小説新潮に書き下ろしの短編と長編が連載されてもいます。ただ、1990年以降、邦訳されたのは「凶悪」と「幻影」のわずか2冊のみです。
 本国では、今年も新作の「Schemers」が発表されています。第1作の「誘拐」ですでに47歳だった名無しの探偵なのに、いまだに現役を続けているわけで、愚痴をこぼしつつ老体に鞭打つ姿を想像するだけで、なおさら読んでみたくなりますね。

 ドアをひらいて、中をのぞきこんだ。紙や筆記用具の散らばったデスクを前に、鉛筆を耳にはさんだ、でっぷりとした男が坐っていた。目の前には、ひらいた帳簿が置いてある。デスクの隅には、カナディアン・ウィスキーの壜と並んで、中身の半分入ったグラスも置かれていた。ちらっとこちらを見やった男は、ウィスキーの壜に目を転じて顔をしかめ、両手をぺたっと帳簿の上に置いた。この会社のオーナーのくせに、執務中酒を飲んでいるところを他人に見られたのが気になるのだろうか。

 以前、取り上げた「幻影」と同じく、ウイスキーが物語のキー・アイテムになっています。
 さる有名なブランドで、全体が茶色い地で、黒い線でふちどりされているカナディアン・ウイスキー、といえば、まず、カナディアン・クラブでしょう。
 最近、このウイスキーを飲む機会があったのですが、カナディアンらしいフレーヴァーがめっきり乏しくなっていて落胆しました。カナディアンよ、おまえもか。ですな。



 ところで、更新の間合いが空いているので、今後の予定を挙げておきます。

 次回は、コリン・ウィルコックスのヘイスティングス警部シリーズの「暗殺者は四時に訪れる」でロイヤル・サルート、













 次いで、S・J・ローザンのリディア・チンとビル・スミスのシリーズの「ピアノ・ソナタ」ほかでメーカーズ・マーク、












 さらに、ピーター・ロビンスンのバンクス主席警部シリーズの「エミリーの不在」でラフロイグ、のつもりです。まだ、どれも記事は書いていないけれど。












 紹介したいミステリーを指折り数えてみたら、月に3、4回のペースならあと3年はだらだらと続くことになりそうです。面倒でもいましばらくおつき合い下さいませ。

シリーズ・リスト

「誘 拐」 新潮文庫 1977
「失 踪」 新潮文庫 1978
「殺 意」 新潮文庫 1980
「暴 発」 徳間文庫 1987
「依頼人は三度襲われる」 文春文庫 1980 コリン・ウィルコックスとの共著
「死 角」 新潮文庫 1981
「脅 迫」 新潮文庫 1983
「名無しの事件ファイル」 新潮文庫 1984 中編集
「迷 路」 徳間文庫 1987
「標 的」 徳間文庫 1988
「追 跡」 徳間文庫 1988
「復 讐」 徳間文庫 1985
「亡 霊」 徳間文庫 1989
「ダブル」 徳間文庫 1989 マーシャ・マラーとの共著
「骨」 徳間文庫 1989
「奈 落」 徳間文庫 1990
「報 復」 徳間文庫 1990
「凶 悪」 講談社文庫 2000
「幻 影」 講談社文庫 2003