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2008年12月02日

シリウス・ファイル




















 英国の秘密組織のエージェント、ジャック・ヴァレンタインが主人公の第1作です。

 ジャックが好きなウイスキーはレッド・ブレストです。ただ、本作にはレッド・ブレスト以外にも、ミステリーの世界ではかなり珍しいウイスキーが出てくるので、今回はそのウイスキーを取り上げました。二度と紹介する機会のなさそうな銘柄ですから。

 わたしは、海図台の下の折りたたみ式ベッドで寝ているぼろぼろの密輸業者と、疲労でよろめきながらやはり下へ行こうとしている刑事をいぶかしげに見た。彼らが、大昔の兵法家の漠然とした警句を今にも引用しはじめるような気がしたのだ。そして、リーガンが地図用引き出しからクレステド・テンの瓶を出し、わたしたちに勧めるのを見てほっとした。

 クレステド・テン、クレステッド・テンは、ジェイムソンの高級品にあたるシルキーな口当たりのブレンディッド・ウイスキーで、ボウ・ストリート・ディスティラリー社が1963年に発売しました。
 ジム・マーレー氏は、「見事な技巧の結実」と称えていますが、マイケル・ジャクソン氏は、「ソフィストケートされたウイスキーで、エクゼクティブやビジネスマンに向いている」と、やや皮肉めいたコメントを残しています。たしかに、ジェイムソンを飲み慣れていると上品すぎてちょっと物足りないし、ジェイムソンのラインナップが充実するにつれ、存在感が薄らいでいるのも否めません。

 ブランドネームは、「最上の10年」といったニュアンスだと思います。しかし、8年程度の原酒をブレンドしていると記述した資料も目にしたので、ネーミングの由来はべつなのかもしれず、断言はできないです。

 クレストには、「最上の」のほかに「頂飾」の意味もあります。
 騎士の兜飾りに由来する紋章の装飾のひとつで、クレステッド・テンのボトルラベルにも、ジェイムソン家のクレストの3本マストの帆船が描かれています。
 ジェイムソン家の紋章は、クレストの帆船のほかに、セント・パトリック・クロスに希望のシンボルの五眸星と、おそらくスコットランドとアイルランドを象徴するふたつの錨がデザインされ、スクロール、巻物にラテン語で、Sine Metu、恐れを捨てて、と記されています。
 新天地を求めて家族とともにアイルランド海を渡った、創業者のジョン・ジェイムソンの覚悟のほどを表しているのでしょう。

 でも、すべてぼくの推測に過ぎないので、決して鵜呑みにしないでくださいね。バーでジェイムソンのボトルを片手に、彼女とバーテンダーを相手に薀蓄たれて大恥さらしても、いっさい責任をとるつもりはないですよ。

シリーズ・リスト

「シリウス・ファイル」 新潮文庫 2004
「シャドウ・ゲーム」 新潮文庫 2006
「ブラック・ドッグ」 新潮文庫 2007

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この記事へのコメント
いやあ、ジェイムソンの高級品ですかぁ 美味しそうですねえ
最近あまりアイリッシュを置いているお店が少なくって・・・
最近呑んでないなあ

ところでこの作品って活劇ですか?スパイものなんでしょうか?
年末年始に読みふけってみたいです
Posted by あっきー at 2008年12月03日 22:52
>あっきーさん

ぼくはジェイムソンのほうが好みですね。風味はいいのですが力強さに欠けるので、アイリッシュ・ウイスキー漬けの呑んだくれにはちょっと物足りないかなあ。

活劇ですね。クリードはアイルランドの作家で、やはりジャック・ヒギンズの系譜にいれるべきでしょう。面白いですし、古本も出回っているから、ぜひ一読してみてください。
Posted by THE WHISKEY at 2008年12月04日 16:56